2023 年 39 巻 4 号 p. 209-216
肺動脈性肺高血圧症においては,肺動脈の攣縮やリモデリングに伴う右心室の後負荷上昇による右室機能不全が主要な死亡原因である.肺高血圧治療の主軸は肺血管拡張薬であり,右心室をターゲットにしたものではない.このため,右室機能の評価が肺高血圧の治療効果判定において重要な位置付けと考えられる.右心室は左心室の心筋線維の走行や形態とは異なり,コンプライアンスは高く容量負荷に対して耐えられるが圧負荷に対しては脆弱である.右心室は肺高血圧による圧負荷に対し心筋壁を肥厚させることで代償するが,進行すると代償機構が崩れ血行動態は破綻することになる.これに加え,重症の三尖弁逆流が容量負荷を来し右室の駆出力を低下させ,心拍出量をさらに低下させる悪循環に陥る.このように,右室の収縮能と肺動脈圧の後負荷は互いに関連をしており,この関係性を右室肺動脈カップリングと呼ぶ.本稿では,肺動脈性肺高血圧症における右室肺動脈カップリングについて概説する.