抄録
1998年〜2006年の9年間に九州大学小児歯科を受診した476名の小児患者について,パノラマエックス線写真とGleiser & Huntの石灰化段階をもとに,第一大臼歯の形成と萌出の左右差の検討を行った。
第一大臼歯の萌出の左右差は全体の13.2%で認められ,最も差が認められたのは6歳の21.3%であった。また第一大臼歯の形成の左右差は全体の7.4%で認められ,最も差が認められたのは6歳の12.4%であった。一般に,歯の萌出の遅れは形成の遅れによるものと考えられてきたが,実際には歯の形成以外の要因で萌出の遅れが認められる症例が存在することが明らかとなった。
また,歯胚の咬合平面方向への移動は,上顎第一大臼歯は4歳から5歳にかけて,下顎は3歳から4歳にかけて開始し,下顎第一大臼歯では,7歳でほぼ全ての症例が咬合平面に達するのに対し,上顎では下顎と比較すると1〜2年遅れるとともに,個人差が大きいことが明らかとなった。
小児歯科臨床においては,全身的または局所的既往が認められない患児においても,第一大臼歯の萌出時期に左右差が認められる症例をしばしば経験する。今回の調査で得られた知見は,このような症例において,どの時期まで経過観察が可能であるかの判断をするための一つの参考資料を提供できたものと考える。