当院に来院した初診時3歳以下の小児238名に対し口腔内診査,アンケート調査を行った。そのうち母乳群114名に対し卒乳時期を6か月ごとのグループに分け,卒乳時期別に上顎乳前歯の齲蝕罹患者率と齲蝕罹患歯率,CAT値,アンケート調査時現在の含糖飲食物の摂取回数などを調べた。さらに,1歳以上で卒乳した群98名については1日の授乳回数,夜間授乳回数などを調べ,比較検討を行った。その結果,以下の結論を得た。
1. 卒乳時期と齲蝕罹患者率,齲蝕罹患歯率との関連性は,卒乳時期が遅くなるほど齲蝕罹患者率は高い傾向がみられ,さらに齲蝕罹患歯率は有意に高かった。
2. 卒乳時期と1歳以降の1日の平均授乳回数,平均夜間授乳回数との関連性は,卒乳時期が遅いほど1日の平均授乳回数,平均夜間授乳回数ともに有意に多かった。
3. 卒乳時期と現在の含糖飲食物の平均摂取回数との関連性は,卒乳時期が遅いほど含糖飲食物の平均摂取回数は有意に多かった。
4. 卒乳時期が遅いほど,母親の出産年齢が高い者が多く,出生順位も第3子,第4子の割合が多い傾向があった。また,離乳が難しかったと答えた者の割合が多かった。
すなわち,卒乳の遅い小児はその時期が遅くなるほど齲蝕罹患性が高く,授乳回数,砂糖含有飲料や菓子の摂取回数も増加していた。その傾向は卒乳時期が遅いほど顕著であった。
以上から,低年齢児の齲蝕の原因は母乳そのものではなく,卒乳の遅れ,授乳回数の多さなどの授乳習慣が間食の頻回摂取につながり,小児の齲蝕罹患性を高めていると思われた。
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