小児歯科学雑誌
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総説
感染性心内膜炎患者心臓弁に存在する口腔細菌に関する分子生物学的解析
野村 良太
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2009 年 47 巻 4 号 p. 561-567

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抄録

感染性心内膜炎(IE)は心疾患を有する患者の心内膜や弁膜表層への細菌感染により発生する。IE の起炎菌の特定には主に血液培養法が用いられているが,近年では,分子生物学的手法が応用されつつある。本研究では,10 症例のIE 患者から摘出された心臓弁検体に対して,異なる2 種類の分子生物学的手法による分析を行い,それぞれの手法から得られた結果と血液培養法による結果を比較検討した。血液培養法では,10 症例のうち8 症例で菌種が特定されたが,1 症例では菌株を分離することができず,他の1 症例では菌種の同定が不可能であった。一方,2 つの分子生物学的手法のいずれにおいても,多くの症例から複数の菌種が検出された。次に,6 種の口腔レンサ球菌を用いて,2 つの異なる分子生物学的手法により決定される菌種とその検出限界について分析したところ,得られた結果が使用した菌種と一致しないものが存在したが,1~100 集落形成単位の菌量があれば検出が可能であることが明らかとなった。以上のことから,分子生物学的手法は検出感度が非常に高く,臨床応用の際に有用ではあるが,検出された菌種が起炎菌であるか,血液中に一過性に侵入したものかの判断が重要であることが示唆された。

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© 2009 日本小児歯科学会
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