抄録
レーザーが乳歯へ与える熱作用を調べる目的で連続波Nd : YAG レーザー(8W,2秒,5W,2秒)を乳歯エナメル質へ照射し,偏光顕微鏡,SEM(走査型電子顕微鏡),微小部エックス線回折装置を用いて無機結晶の構造と性状を調べた。その結果,レーザー照射された中心領域は乳白色の円形を呈し,SEM 観察では,照射されたエナメル質表面は滑らかさが消失しており,無機結晶が露呈した構造が認められた。偏光顕微鏡による観察では,照射中心領域の周りをいくつかの干渉色の異なる半円形状の層状構造が認められた。微小部エックス線回折法による分析では,レーザー照射中心部からはα-Ca3(PO4)2 などのハイドロキシアパタイトの高温相とβ-Ca3(PO4)2 およびα-, β-, γ-Ca2P2O7 などの準高温相が同定された。これらの変性領域は,エナメル象牙境に向かってエナメル質の深部にまでdiffuse に拡がっていることが認められた。