小児歯科学雑誌
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原著
Er : YAG レーザー照射による乳歯エナメル質結晶の組成/構造変化に関する研究
清水 栄哉牧口 哲英鈴木 克政長弘 謙樹荻原 和彦廣田 文男
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2009 年 47 巻 4 号 p. 585-593

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抄録

レーザーの乳歯への熱作用を調べる目的でEr : YAG レーザーを乳歯エナメル質へ照射し,無機結晶の変性(alteration)を調べた結果,出力250 mJ, 2 Hz, 200 pulse および150 mJ, 2 Hz, 200 pulse のいずれの照射条件下においても歯面にはクレーターが形成された。SEM(走査型電子顕微鏡)観察の結果,クレーターの壁面にはレーザーにより有機質が蒸散された後に残存したエナメル小柱群により構成されたブロックが形成され,いくつもの層が積み重なった岩盤様構造を呈した。照射された歯面を詳細に観察した結果,特に250 mJ 照射の場合には,クレーターの辺縁周囲の狭い一層にはマイクロクラックが生じていることが認められた。偏光顕微鏡による観察の結果,クレーター壁面の照射中心領域は黒褐色,その周りをオレンジ色の干渉色を示す半円形状の一層が認められた。その状況は250 mJ および150 mJ の照射条件でも同様であったが,250 mJ 照射の方が深いクレーターが形成された。微小部X 線回折法を用いてこれらの変性領域を分析した結果,クレーター壁面の照射中心領域からはα-Ca3(PO42 などのHAP(ハイドロキシアパタイト)の高温相とβ-Ca3(PO42 およびα-,β-,γ-Ca2PO7 などの準高温相が同定された。また,偏光顕微鏡で黒褐色の干渉色を示した照射中心領域からオレンジ色を示した変性領域に離れるに従って高温相と準高温相の混在から準高温相へ,準高温相から正常なHAP へと変化していることが確認された。

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© 2009 日本小児歯科学会
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