小児歯科学雑誌
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臨床
歯牙腫により萌出を妨げられた上顎犬歯を自家移植した症例
小松 偉二小笠原 克哉丸谷 由里子岩本 勉山田 亜矢福本 敏
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2010 年 48 巻 1 号 p. 101-108

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抄録

今回,著者らは歯牙腫により萌出を妨げられた牽引困難な上顎左側犬歯を自家移植した症例を経験した。患児は,幼児期より定期的な口腔管理を受けていた。以前より上顎左側中切歯および側切歯の萌出遅延を気にしていた。9 歳3 か月から11 歳5 か月時に,上顎左側中切歯および側切歯に対し開窓術を施し,牽引処置を行った。12 歳7 か月時に,上顎左側乳犬歯が晩期残存しており,上顎左側犬歯の萌出を認めなかったため,エックス線撮影を行った結果,左側乳犬歯根尖部に歯牙腫様の境界明瞭な不透過像を認めた。埋伏している上顎左側犬歯尖頭部は,側切歯根尖部付近に存在し,歯根の完成度と歯牙腫様硬組織の存在から,上顎左側犬歯の牽引は困難と思われた。12 歳10 か月時に上顎左側乳犬歯を抜去後,口腔前庭部から左側犬歯および歯牙腫様硬組織を摘出し,直ちに犬歯の再植を行った。犬歯はワイヤーを用いて隣在歯と固定した。移植歯の骨植が安定した後に歯内療法を行い,14 歳8 か月時にレジン前装冠修復を行った。本症例から,再植歯が単根でかつ長い歯根を有することが再植に有利と考えられた。また歯牙腫による摘出窩が十分存在し,再植スペースを十分確保できたことも良好な経過が得られた理由と思われた。さらに,移植歯が完全埋伏しており,歯根が健全で無菌的に処置できた点が,移植の良好な経過に大きく関与したと考えられた。

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© 2010 日本小児歯科学会
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