小児歯科学雑誌
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原著
唇顎口蓋裂児の齲蝕罹患に関する実態調査
丸谷 由里子門馬 祐子山田 亜矢岩本 勉小松 偉二福本 敏
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2010 年 48 巻 1 号 p. 81-89

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抄録
唇顎口蓋裂児の齲蝕罹患状況と,当科で実施している唇顎口蓋裂児に対する早期齲蝕予防プログラムの効果を知る目的で,本調査を行なった。2 歳から8 歳までの唇顎口蓋裂児309 名を対象とした。そのうち204 名は,1 歳から3 歳までの早期齲蝕予防プログラムを受けていた。1 .乳歯に齲蝕罹患経験のある唇顎口蓋裂児は44.0%で,永久歯では11.7%であった。一人平均dft は2.0本,dfs は3.9 歯面,DFT は0.2 本,DFS は2.0 歯面であった。これらの値は,唇顎口蓋裂児に対する過去2 回の調査よりも低く,唇顎口蓋裂児の齲蝕が減少していることが示された。また,健常児と比較しても低い齲蝕罹患率であった。2 .裂型別の齲蝕罹患状況は,口蓋裂児が比較的早期から齲蝕に罹患していた。3 .上顎乳側切歯において,裂側が健側よりも齲蝕罹患率が高かった。4 .乳歯齲蝕罹患者率は早期齲蝕予防プログラムを受けた群(管理群)で33.8%であるのに対し,受けていない群(非管理群)では63.8%であった。また,管理群は一人平均dft が1.5 本,dfs が2.9 歯面,df 歯率が8.7%であり,非管理群は一人平均dft が3.1 本,dfs が6.0 歯面,df 歯率が19.7%で,管理群の齲蝕罹患率が有意に低かった。永久歯についても管理群の齲蝕罹患率が低かった。以上より,早期齲蝕予防プログラムの有効性が示された。
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© 2010 日本小児歯科学会
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