小児歯科学雑誌
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総説
エナメル芽細胞の分化制御機構
山田 亜矢岩本 勉中村 卓史福本 敏
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2010 年 48 巻 3 号 p. 374-380

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抄録
近年の再生医学研究の進展から,人工的な歯の形成や,歯由来細胞を用いた組織再生が実用可能なものとして期待されている。その一方で,歯の再生を考えた場合,機能的な形態を有する歯の構築が必要となるが,その中でもエナメル質の形成は,最も困難と考えられている。したがって,人工的にエナメル質を構築する為にも,エナメル芽細胞の分化メカニズムの理解は大変重要な課題と言える。著者らは,エナメル芽細胞の分化を理解するために,歯の発生段階で,特にエナメル芽細胞の分化に関わる分子群のスクリーニングとその機能解析をおこなってきた。その中で,エナメル基質の1 つであるアメロブラスチンが,エナメル芽細胞分化の鍵となる分子であることが明らかとなった。アメロブラスチンは,エナメル芽細胞の足場蛋白としての機能を有するとともに,細胞の極性決定に関わり,一定の方向にエナメル基質を分泌させる作用を持つ。この作用により,エナメル質は均一な層盤構造と縄状のエナメル小柱を形成し,非常に固い組織でありながら,咬合力に耐えうる柔軟性を持つ。また歯原性上皮腫瘍の原因遺伝子としての側面も持ち,アメロブラスチン遺伝子や蛋白が,本疾患の治療に応用できる可能性も示唆されている。本稿では,エナメル芽細胞分化過程におけるアメロブラスチンの機能と,再生医療への応用について考察する。
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© 2010 日本小児歯科学会
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