抄録
いちのせ小児歯科を受診した92 名において,歯髄腔の閉塞を呈する122 歯の外傷乳前歯の経過と処置について集計・検討した。歯髄腔の閉塞がエックス線写真で確認されるようになるのは,受傷後6 か月~1 年が最も多かった。経過観察中97 歯には臨床上問題となる異常を認めなかったが,25 歯に臨床的異常が認められた。異常所見で最も頻度が高かったのは内部吸収で,一度発症すると自覚症状がないまま急速に進行するケースが多いと考えられた。その結果,歯牙破折,歯髄壊死に至るが,早期に定期診査で判明したケースでは,抜髄処置による保存が有効であった。その他の異常には,歯髄壊死,後継永久歯の萌出障害が認められた。無症状のうちに早期喪失や永久歯の萌出障害などの異変が発生していることから,歯髄腔の閉塞を呈する外傷乳前歯では定期診査と管理の継続が望まれた。