小児歯科学雑誌
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総説
初期齲蝕の病理組織学的検討
脱灰・再石灰化反応の観察と計測
小方 清和
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2010 年 48 巻 4 号 p. 481-488

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抄録
幼若永久歯の初期齲蝕病変に対する再石灰化の向上と脱灰抑制のため,実験的に表層下脱灰病変を作成し,エナメル質の脱灰・再石灰化反応を的確に観察,計測する方法を検討した。1 .初期齲蝕病変を修復するために極めて重要な要素であるエナメル質表層を,視覚的,数値的に評価するため,マイクロラジオグラムや偏光顕微鏡を用いた病理組織学的検討は有効であった。2 .反応領域深度やミネラル喪失量で数値的に脱灰・再石灰化反応を比較検討することで,客観的に再石灰化や脱灰抑制の効果を確認することができた。3 .本実験でエナメル質の反応領域深度は,処理条件に関係なく脱灰は進行していた。再石灰化は脱灰の何倍もの時間がかかり,また表層に白斑が存在するあいだは,機械的刺激に極めて弱い状態にある。齲蝕予防を考える上で,脱灰と再石灰化のバランスがきわめて重要で,再石灰化を強化するばかりでなく,脱灰しやすい生活習慣をあらため,脱灰を抑制するような生活習慣を身につける指導を行っていくことがまず必要であることが確認できた。
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© 2010 日本小児歯科学会
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