小児歯科学雑誌
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総説
透過型光電脈波法による小児期外傷歯の歯髄血流測定
柿野 聡子
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2010 年 48 巻 4 号 p. 489-494

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抄録

透過型光電脈波法は歯髄血流の有無を指標に歯髄の生死を診断する,非侵襲的,客観的な歯髄診断法である。乳歯や幼若永久歯の外傷歯のように感覚閾値の高い歯であっても診断が可能であるため,従来の歯髄電気診の欠点を補い,小児や障害者の歯髄診断に有用であることが報告されている。しかしその一方で,歯の構造的な特殊性から歯髄脈波の発生機序については不明な点も多い。外傷後に歯髄脈波の形状や振幅の変化が見られたが,そのような歯の透過光量変化に影響する因子は複雑であると考えられた。本研究では,LED の波長特異性を利用して歯髄脈波の発生機序や透過光量変化の関連因子を明らかにし,歯髄の病態についての情報を得ることを目的とし,多波長のLED によるヒト上顎中切歯の光学測定を行った。その結果,歯の中での光伝播の様子が明らかになり,歯髄脈波発生に関わる因子として被験者の年齢や病態による歯髄の血管密度変化や血流量変化,歯髄腔の大きさなどが関与すると推察された。また,ヘモグロビンの非等吸収波長を用いることで歯髄血液の酸素飽和度の変化を定性的に検出することができた。今後,目的に合わせた波長の選定や歯の測定に特化した光学系の工夫により,歯髄の病態に関する多くの情報を引き出せる可能性が示唆された。

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© 2010 日本小児歯科学会
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