小児歯科学雑誌
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総説
Bisphosphonates による炎症性副作用の機序・予防・治療
船山 ひろみ
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2010 年 48 巻 4 号 p. 495-504

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抄録
骨吸収抑制薬bisphosphonate(BP)は,骨吸収亢進を伴う疾患に広く応用されている。しかし,顎骨壊死とそれによる顎骨の露出という 予期せぬ副作用が最近続発している。顎骨壊死は窒素を含むBP(以後NBP と略)により発症する一方,窒素を含まないBP(以後non-NBP と略)のclodronate(Clo)とetidronate(Eti)による明らかな発症例は無い。私たちはNBP の炎症性副作用について,以下を明らかにした。①マウスへのLPS の静脈注射は顎骨にヒスタミン合成酵素(histidine decarboxylase, HDC)を誘導し,この誘導はNBP 投与マウスで著しく増強される。②成長期マウスへのBPs の1 回投与が脛骨にエックス線低透過帯(BP-band と呼称)を発現し,骨吸収抑制作用を評価する有用な指標となる。③Clo とNBP の併用投与は,NBP の炎症作用を抑制するが,骨吸収抑制作用は抑制しない。④一方,Eti とNBPs の併用は,NBP の炎症作用と骨吸収抑制作用の両方を抑制する。⑤マウス耳介へのNBPs の皮下注射による壊死作用に対しても,Clo とEti は,強い抑制効果を示し,LPS は増強・促進する。これらの結果は,口腔組織由来LPS とNBPs 相互による炎症増強→顎骨壊死というシナリオを強く示唆する。また,NBPs の炎症・壊死作用がnon-NBP で制御できることを示す。さらに,Clo はNBPs の副作用を予防・軽減する併用薬として,また,Eti はNBPs の代用薬として有効である可能性が強く示唆された。
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© 2010 日本小児歯科学会
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