小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
臨床
先天性無痛無汗症児に発症した下顎骨骨髄炎
歯髄診断に透過型光電脈波法(TLP)を応用した1 例
三輪 全三柿野 聡子上原 奈緒子土橋 なつみ今村 由紀黒原 一人髙木 裕三
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 49 巻 1 号 p. 41-46

詳細
抄録
先天性無痛無汗症(CIPA)は遺伝性感覚・自律神経ニューロパチーのⅣ型であり,精神発達遅滞を伴う常染色体劣性遺伝性疾患である。無随のC 線維や細い有随のAδ 線維が欠如するために,痛覚と発汗機能が欠如している。しかし,太い有髄のAβ 線維は存在しており触覚などはあるとされている。自傷行為による舌,口唇や手指の咬傷,歯の自己抜去まれに下顎骨骨髄炎などが多くみられ,歯科的な治療,ケアが重要な疾患である。今回,無痛無汗症と診断されている11 歳5 か月の女児で歯の自己抜去が原因で下顎骨骨髄炎を発症し,2 か月間に6 歯を喪失し同部位の腐骨除去手術を行った症例を経験した。術前に当科で腐骨の除去範囲および抜去する歯の決定のために歯髄の生死診断を行った。EPT(歯髄電気診)では,測定したすべての歯が無反応であり,歯髄診断が無効であったが,これは本疾患における歯髄感覚の伝達機構(C 線維およびAδ 線維)が欠如するためと思われた。これに代わって,歯髄血流の有無が測定可能なTLP(透過型光電脈波)法を用いて歯髄血流の有無を測定した。その結果,腐骨と境界領域にある下顎右側第2 小臼歯は血流が確認でき生活歯と診断され,抜去せずに保存したところ,手術より10 か月後における当該歯と下顎骨のエックス線検査およびTLP 法による検査では予後の経過は良好であった。
著者関連情報
© 2011 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top