小児歯科学雑誌
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臨床
埋伏した下顎右側第二乳臼歯を萌出誘導した1 例
柳井 みず紀田代 知帆子島田 幸恵井上 美津子入江 太朗立川 哲彦
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2011 年 49 巻 1 号 p. 52-59

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抄録
乳歯の萌出障害は永久歯に比べて頻度が少ないが,後継永久歯の萌出遅延や位置異常,形成不全などを惹起するため,早期発見が重要である。今回著者らは,埋伏した下顎右側第二乳臼歯を開窓,牽引により萌出誘導した症例を経験したので報告する。患児は1 歳11 か月時より定期健診のため来院していた男児で,2 歳8 か月時には下顎右側第二乳臼歯萌出遅延の可能性が考えられた。4 歳3 か月時に撮影されたパノラマエックス線写真にて,下顎右側第二乳臼歯が遠心に傾斜して埋伏している状態が確認され,その歯冠周囲に石灰化物様の不透過像を含んだ透過像を,また下顎右側第一大臼歯上方には嚢胞様所見が認められた。5 歳2 か月時に全身麻酔下で下顎右側第二乳臼歯および下顎右側第一大臼歯部の過誤腫様組織の摘出を行い,約半年後から下顎右側第二乳臼歯の牽引を開始し,その約1 年後に萌出をみた。その後下顎右側第一大臼歯は8 歳7 か月時に萌出し,下顎右側第二乳臼歯脱落後,10 歳11 か月時に下顎右側第二小臼歯も萌出を開始した。本症例では,早期発見と適切な時期の治療開始により,下顎右側第二乳臼歯の萌出を導くことができ,さらに,下顎右側第一大臼歯の形成発育をも促すことができたと考えられる。
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© 2011 日本小児歯科学会
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