抄録
【目的】IGSラット研究会の活動として、6施設参画によるWistar Hannover(WH)ラットの胚・胎児発生試験に関する背景データの収集を実施した。
【方法】日本チャールスリバー株式会社より提供されたCrl:WI(Han)ラットを用いて胚・胎児発生試験に関する背景データの収集を実施した。また、得られた結果をCrj:CD(SD)ラットの背景データ(Cong. Anom., 37: 47-138, 1997)と比較した。飼料、投与期間、投与物質、投与容量、帝王切開日、胎児標本の作製方法などは、各施設の通常の実施方法に準じた。
【結果】帝王切開時の観察において、黄体数、着床数、生存胎児数の低値、胎児体重および胎盤重量の低値が認められた。着床後死亡率および胎児の性比は、SDラットと同程度であった。胎児の外表異常は観察されなかった。内臓異常としては左臍動脈遺残が、骨格変異としては頸肋、過剰肋骨、波状肋骨が高頻度に観察された。
【考察】WHラットの特徴として、黄体・着床・生存胎児数および胎児体重の低値、ある種の内臓異常・骨格変異の出現頻度の増加が確認され、背景データ収集の重要性が示された。NTPは2009年にWHラットの繁殖能力の問題点(胎児数が10例に満たない、性比に偏りがある)を指摘したが、今回の共同研究ではそのような問題点は観察されず、WHラットを生殖発生毒性試験の評価に用いることに問題はないと考えられた。