小児歯科学雑誌
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原著
当科における歯の外傷の臨床統計的観察
20 年前との比較
園本 美惠森本 容子亀井 有太郎中野 智子嘉藤 幹夫
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2011 年 49 巻 2 号 p. 165-171

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抄録
歯の外傷を主訴に小児歯科外来を受診する小児は最近増加していると思われる。今回,歯の外傷を主訴として大阪歯科大学附属病院小児歯科外来を受診した小児について,1978 年~1987 年と1999 年~2008年を比較し,最近の歯の外傷の傾向について考察した。初診患者数は20 年前と比べて減少しているが,歯の外傷を主訴として受診した患者の割合は増加していた。男女比は1.5~1.7 : 1 で大きな変化はなかった。また,年齢分布ではともに1~2 歳および7~8 歳が多かったが,20 年前に比べると低年齢の受診が増加傾向にあった。受傷原因は20 年前より転倒によるものが多く,小児の運動能力の低下がうかがわれた。また,受傷場所は,屋内での受傷が増加し,20 年前に比べて,小児の活動場所が屋内中心になってきているものと考えられた。受傷部位については上顎前歯が圧倒的に多く,年代差はみられなかった。受傷分類では同様の傾向がみられ,乳歯・永久歯とも軽度の位置異常を伴う脱臼が最も多いが,永久歯の方が歯冠破折の割合が多くみられた。来院までの経過時間は1 日以内に受診するものが約半数を占め,20 年前に比べて,早期受診する傾向にあった。これらの結果をふまえ,受傷後の早期受診を促し,受傷しにくい環境の整備を行い,運動能力の向上や受傷防止についての小児への教育などの予防法について考えることが必要であると思われた。
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© 2011 日本小児歯科学会
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