小児歯科学雑誌
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臨床
治療通院中に発見された5歳男児の唾石症の1例
小木曽 瑛理渥美 信子東 公彦犬飼 順子福田 理
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2011 年 49 巻 2 号 p. 180-186

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抄録
唾石症は,青壮年期に顎下腺導管内に好発し,口腔外科領域において数多くみられる疾患であるが,小児期に発症することは少ないとされている。今回5 歳6 か月男児の形成段階が極めて初期の唾石症を経験したので,その臨床所見,摘出唾石の走査型電子顕微鏡(SEM)所見,エネルギー分散型エックス線分析装置(EDX)による定性分析および電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)によるマッピング分析の結果について報告する。患児は齲蝕治療の目的で当科に通院中であった。自覚症状はなかったが,母親からの訴えにより顎下腺開口部に認められた唾石を発見することができた。摘出は,舌下小丘の小切開による開口部の拡大という,最小限の侵襲によって行うことができ,その後再発は認められない。SEM 所見,定性分析の結果から形成後まもない唾石であることが判明した。小児歯科診療では定期的な口腔管理を行っているが,口腔内診察時には,歯,歯肉,歯列および咬合のみならず,口底,舌,口蓋,頬粘膜等,口腔全体にまで目をむけることが大切である。さらに家庭で,母親が仕上げ磨きを行う際にも歯のみならず,軟組織にまで注意をむけて口腔内を観察するように指導することも必要であると考えられた。
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© 2011 日本小児歯科学会
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