小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
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原著
高精度モーションキャプチャシステム を用いた刷掃動作の解析
第1 報:歯ブラシの動きを定量的に評価する方法の考案
余 永有村 栄次郎稲田 絵美齊藤 一誠武元 嘉彦村上 大輔下田平 貴子福重 雅美北上 真由美山﨑 要一
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2011 年 49 巻 5 号 p. 452-458

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抄録

歯科医療従事者が患者に対して歯の刷掃指導をする際,患者の手技の習得段階は主観的にしか評価されていないのが現状である。また,口腔の健康と全身の健康の関連性が徐々に明らかになってきているものの,口腔の健康に大きく影響を与える刷掃手技に関して,指導・評価の指標も明確にされていない。歯科医療従事者が適切な指導を行い,評価するためには,刷掃動作を定量的に評価する方法を確立し,科学的な根拠を示す必要がある。本研究では被験者の運動情報を3 次元座標値として取得することが可能なモーションキャプチャシステムを用い,歯科衛生士が歯を刷掃する際の歯ブラシの動きを記録した。得られた数値の時系列変化量から歯ブラシの往復運動のピーク周波数と往復幅を反映するパワースペクトル値を算出して,刷掃動作を定量的に評価し,以下の結論を得た。1 .本システムは,被験者の運動情報を高精度かつ連続的に,3 次元空間座標値として取得することができ,刷掃動作時の歯ブラシの動きを定量的に評価することが可能であった。2 .歯科衛生士の刷掃動作の特徴として,上顎右側臼歯部頬側の刷掃時周波数は,左側より低く,また,動きが不安定な傾向があったものの,個体内変動が小さいことから,個人の固有運動リズムが存在することが明らかになった。この固有運動リズムは,歯磨きの有用な指標の一つになり得ると考えられた。

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© 2011 日本小児歯科学会
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