小児歯科学雑誌
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臨床
混合歯列期前期に発見された単純性骨嚢胞の1例
深瀬 直子小平 裕恵守安 克也朝田 芳信
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2013 年 51 巻 1 号 p. 28-35

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抄録

顎骨にみられる単純性骨嚢胞は10 歳以前に発生することは稀とされている。今回,7 歳男児の下顎骨に発生した単純性骨嚢胞の1 例を経験したので概要を報告する。患児は7 歳時に齲蝕診査のために撮影した下顎左側乳臼歯部の根尖投影法エックス線写真で,偶然に単純性骨嚢胞が発見された。パノラマエックス線写真では,歯根未完成の左側第二小臼歯の直下に広範なエックス線透過像が認められた。病理組織診断も兼ねて開窓処置を局所麻酔下にて行った。開窓後3 か月では,下顎骨の透過像は縮小傾向が認められた。処置後6 か月より,上顎の萌出余地不足の改善のために側方拡大装置および下顎乳臼歯早期喪失部の保隙のために可撤保隙装置を装着し咬合誘導を行った。処置1 年後,エックス線透過像の縮小がみられ,嚢胞内に骨の新生が認められた。処置9 年後では,顎骨内にわずかな透過像は残存していたが,臨床所見やエックス線写真所見では嚢胞の再発の兆候はみられなかった。形成障害,萌出遅延,萌出位置異常などの永久歯の発育障害もなく,正常な永久歯列を獲得した。本症例は単純性骨嚢胞を早期に発見し適切に対応したことにより,永久歯の発育障害を回避でき,正常な永久歯列を育成し得たものと考える。

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© 2013 日本小児歯科学会
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