表面改質型酸反応性無機ガラスフィラー(以下S-PRG フィラー)を0, 5, 10, 20, 30 wt%含有した歯科矯正用レジンのフッ化物の徐放能,およびフッ化物のリチャージ能について検討した。1 日目から5 日目まで,各試料を3m
l の蒸留水に浸漬し,24 時間毎に蒸留水中に溶出したフッ化物濃度を定量した。6 日目から10 日目は1,000 ppm フッ化物溶液に8 時間浸漬した後,蒸留水に16 時間浸漬し,溶出したフッ化物濃度を定量した。11 日目から15 日目はリチャージを中止し,24 時間毎に蒸留水中に溶出したフッ化物濃度を定量した。また,実験前後での表面構造を確認するため,フィールドエミッション型電子線マイクロアナライザー(以下EPMA)を用いて表面構造の観察を行った。本研究により以下の結論を得た。1 .リチャージの有無にかかわらず,フッ化物の徐放量は,S-PRG フィラー含有率が高い程多く,5wt%と20 wt%および30 wt%間,10 wt%と30 wt%間に有意差が認められた。2 .S-PRG フィラー5wt%,または10 wt%,20 wt%含有試料では,フッ化物のリチャージを繰り返すことで,フッ化物の徐放量が有意に減少したが,30 wt%含有した試料では徐放量に有意な低下は認められなかった。3 .実験開始前と終了時での試料の組成像では,レジン重合部にはS-PRG フィラーはレジン内に均一に存在したが,部分的にはフィラー凝集体も確認された。実験後の試料表層部でのフィラーの脱落,崩壊などは認められなかった。
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