小児歯科学雑誌
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原著
咀嚼異常ラットにおける抗菌薬および非ステロイド性抗炎症薬の薬物動態に関する研究
柴崎 兼次久保山 昇
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2014 年 52 巻 1 号 p. 38-46

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抄録

咀嚼機能低下時の薬物動態に関する報告は極めて少ないことから,咀嚼機能を低下させる目的で実験的無歯顎ラットを泥状飼料で飼育し,抗菌薬としてBacampicillin(BAPC),Cefaclor(CCL),非ステロイド性抗炎症薬としてAcetylsalicylic acid(ASA),Indomethacin(IDM)の薬物動態を検討した。【方法】Wistar 系雄性ラット5 週齢を,1 群5 匹とし8 群に分け,実験開始1 週間後に上,下顎大臼歯を抜歯し,抜歯後実験期間を10 週間とした。飼料は,第1~4 群は固形飼料(Solid 群),第5~8 群は泥状飼料(Mud 群,固形飼料:水=1: 1)を用いた。飼育終了後,Solid 群,Mud 群にそれぞれ,BAPC, CCL, ASA 20 mg/kg, IDM 10 mg/kg を経口投与した。血漿中ABPC, CCL の定量は,Micrococcus luteus ATCC 9341 株を検定菌とし薄層paper disc 法で,血漿中ASA, IDM はHigh-performance Liquid Chromatography(HPLC)により定量した。【結果】①BAPC:最高血漿中濃度(Cmax)はSolid 群で5.34 μg/ml,Mud群は6.85 μg/ml,最高血漿中濃度到達時間(Tmax)は23.3 min, 37.5 min とそれぞれ有意の差を示した。Solid 群およびMud 群の血漿中濃度曲線下面積(AUC)はそれぞれ10.4 μg・hr/ml, 14.5 μg・hr/ml を示した。②CCL : Cmax はSolid 群5.44 μg /ml,Mud群7.17 μg/ml,Tmaxは44.4 min, 51.0 min とそれぞれ有意の差を示した。一次吸収速度定数(ka)値は,1.59 hr−1,1.51hr−1,一次消失速度定数(ke)値は,1.14 hr−1,0.69hr−1 を示した。③ASA : Cmax, Tmax,AUC,生物学的半減期(t1/2)はMud 群の方が高値を示したが,有意の差は認められなかった。④IDM : ASA 同様にMud 群で高値を示した。以上の成績より,実験的咀嚼異常ラット(Mud 群)は対照(Solid 群)と比較すると,本研究で用いた薬物の内,抗菌薬に関しては,Cmax, Tmax, AUC およびt1/2 では有意に高値を示した。一方,非ステロイド性抗炎症薬に関しては,血中濃度が高く維持される傾向が認められた。従って,咀嚼機能低下を引き起こすと,抗菌薬および非ステロイド性抗炎症薬は血中の消失速度が低下し,長く生体内に停滞することを明らかにした。

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© 2014 日本小児歯科学会
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