小児歯科学雑誌
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52 巻 , 1 号
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総説
  • 野村 良太
    2014 年 52 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    齲蝕の主要な病原細菌であるStreptococcus mutansは,感染性心内膜炎の起炎菌としても知られている。S. mutansは血清学的にc/e/f/kの4種の血清型に分類される。口腔内から分離されるS. mutans菌株の約70~80%はc型,約20%がe型に分類されるが,f型株やk型株は5%以下の頻度でしか存在しない。一方で,感染性心内膜炎患者から摘出された心臓弁ではk型が高い頻度で検出される。感染性心内膜炎の病原因子の1つとして,コラーゲン結合タンパクであるCnmが2004年に同定され,一部のS. mutans株がコラーゲンへの結合能を有することが明らかになった。そこで,kS. mutans株を用いて分析したところ,その多くがコラーゲン結合能を有するにもかかわらず,Cnmを保有しないことが分かった。実際に,k型株のゲノムDNAを用いて,分子生物学的手法により新規コラーゲン結合タンパクをコードする遺伝子の同定を行い,そのタンパクをCbmと命名した。Cbm陽性菌株は,Cnm陽性菌株よりも有意に高いコラーゲン結合能を有しており,感染性心内膜炎に対して高い病原性を示す可能性が考えられた。また,コラーゲン結合タンパクを保有している株のうち,特に分子量約190kDaのPAタンパクを発現しない菌株では,ヒト臍帯血血管内皮細胞への高い付着能および侵入能を有していることも分かり,これらの菌体表層タンパクが感染性心内膜炎の主要な病原因子の1 つである可能性が示唆された。
原著
  • 猪狩 道代, 岡田 英俊, 島村 和宏
    2014 年 52 巻 1 号 p. 12-25
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    乳臼歯隣接面複雑窩洞に対するコンポジットレジン修復時の窩洞条件,使用レジンと充填操作の選択条件を検索する目的で本研究を行った。乳臼歯を想定した代用人工歯を用い,歯肉側壁の幅を1mmまたは2mm,辺縁形態にストレート,フレアー,リバースカーブ状を付与した6 種類の窩洞を設定した。レジンはペースト型と2 種類のフロアブル型を使用した。それぞれのレジンを単一充填した試料と下層にフロアブル型,上層にペースト型を充填した試料を作製した。各試料の辺縁と移行部に圧縮試験を行い,比較検討した。その結果,以下の結論を得た。1 .全ての条件で圧縮強さが辺縁で低く,移行部よりも辺縁破折の可能性が高かった。2 .辺縁破折を防ぐには,レジンおよび歯質辺縁が薄くならないよう辺縁にリバースカーブを付与し,露髄を避けて可及的に広い歯肉側壁の設定が望まれた。3 .辺縁が外開きになった場合,歯肉側壁が狭い窩洞は強度不足となる可能性があった。4 .辺縁が外開きとなった場合,歯肉側壁を広めにとるか圧縮強度の高い材料の単一充填が,辺縁破折防止に寄与すると示唆された。5 .フロアブル型レジン上にペースト型レジンを充填する手法は,臨床上強度向上に効果的であると考えられた。以上の結果から,乳臼歯隣接面複雑窩洞では辺縁形態と窩洞側壁の幅に対する配慮,使用するレジンの組み合わせにより修復後の予後に影響することが示唆された。
  • 柏村 晴子
    2014 年 52 巻 1 号 p. 26-37
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    我々は,カルシウムフルオロアルミノシリケート粉末混濁液とリン酸水溶液の2 液からなるフッ素系ナノシール剤(以下ナノシール剤)を試作し本剤の粒子沈着効果を利用した耐酸性効果を明らかにすることを目的として,人歯を用いAPF 製剤との比較研究を行った。耐酸性能の評価には,QLF とFE-SEM を用い,人工齲蝕エナメル質と健全エナメル質の耐酸性能の検討を行った。1.QLFを用いた耐酸性能評価において,人工的初期齲蝕および健全エナメル質の双方でナノシール剤はコントロール群よりも高い耐酸性能を示した。2 .人工的初期齲蝕におけるFE-SEM 観察において,APF ゲルおよびAPF 液群では,薬剤塗布直後と脱灰72時間後を比較すると,一部の表面に脱灰の進行が認められた。これに対して,ナノシール剤群では,脱灰処理前後もエナメル質表層に大きな差はみられなかった。3 .健全エナメル質表面に沈着したナノ粒子析出物は,FE-SEM 観察においてエナメル質表層へ緊密な被覆が確認された。4 .健全エナメル質において行われた,塗布・脱灰を繰り返した実験でも,ナノシール剤は安定した耐酸性能を示した。以上より,本剤は,新たな齲蝕予防剤としての使用が期待できると考えられた。
  • 柴崎 兼次, 久保山 昇
    2014 年 52 巻 1 号 p. 38-46
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    咀嚼機能低下時の薬物動態に関する報告は極めて少ないことから,咀嚼機能を低下させる目的で実験的無歯顎ラットを泥状飼料で飼育し,抗菌薬としてBacampicillin(BAPC),Cefaclor(CCL),非ステロイド性抗炎症薬としてAcetylsalicylic acid(ASA),Indomethacin(IDM)の薬物動態を検討した。【方法】Wistar 系雄性ラット5 週齢を,1 群5 匹とし8 群に分け,実験開始1 週間後に上,下顎大臼歯を抜歯し,抜歯後実験期間を10 週間とした。飼料は,第1~4 群は固形飼料(Solid 群),第5~8 群は泥状飼料(Mud 群,固形飼料:水=1: 1)を用いた。飼育終了後,Solid 群,Mud 群にそれぞれ,BAPC, CCL, ASA 20 mg/kg, IDM 10 mg/kg を経口投与した。血漿中ABPC, CCL の定量は,Micrococcus luteus ATCC 9341 株を検定菌とし薄層paper disc 法で,血漿中ASA, IDM はHigh-performance Liquid Chromatography(HPLC)により定量した。【結果】①BAPC:最高血漿中濃度(Cmax)はSolid 群で5.34 μg/ml,Mud群は6.85 μg/ml,最高血漿中濃度到達時間(Tmax)は23.3 min, 37.5 min とそれぞれ有意の差を示した。Solid 群およびMud 群の血漿中濃度曲線下面積(AUC)はそれぞれ10.4 μg・hr/ml, 14.5 μg・hr/ml を示した。②CCL : Cmax はSolid 群5.44 μg /ml,Mud群7.17 μg/ml,Tmaxは44.4 min, 51.0 min とそれぞれ有意の差を示した。一次吸収速度定数(ka)値は,1.59 hr−1,1.51hr−1,一次消失速度定数(ke)値は,1.14 hr−1,0.69hr−1 を示した。③ASA : Cmax, Tmax,AUC,生物学的半減期(t1/2)はMud 群の方が高値を示したが,有意の差は認められなかった。④IDM : ASA 同様にMud 群で高値を示した。以上の成績より,実験的咀嚼異常ラット(Mud 群)は対照(Solid 群)と比較すると,本研究で用いた薬物の内,抗菌薬に関しては,Cmax, Tmax, AUC およびt1/2 では有意に高値を示した。一方,非ステロイド性抗炎症薬に関しては,血中濃度が高く維持される傾向が認められた。従って,咀嚼機能低下を引き起こすと,抗菌薬および非ステロイド性抗炎症薬は血中の消失速度が低下し,長く生体内に停滞することを明らかにした。
  • 岩田 美奈子, 小鹿 裕子, 浦野 絢子, 荒井 亮, 山頭 亜里沙, 隝田 みゆき, 辻野 啓一郎, 櫻井 敦朗, 大多和 由美, 新谷 ...
    2014 年 52 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    少子高齢化社会となった現在,都心に位置する大学病院小児歯科の役割にも大きな変化があると考えられる。そこで,平成22 年1 月から平成24 年12 月までの3 年間に本学水道橋病院小児歯科外来に初診来院した小児1,816 名について,来院時年齢,来院動機,居住地域,紹介の有無を調査した(平成24 年の調査)。そして,約15 年前に当科で実施した3 年間の調査(平成10 年の調査)と比較・検討し,以下の結論を得た。1 .16 歳未満の初診患者数は平成10 年の調査(849 名)と比較し,著しく増加していた。さらに,紹介により来院した小児も52.6%で,平成10 年の調査の27.9%から著しく増加していた。2 .年齢別にみると4 歳と7 歳が多く,それぞれ全体の10.1%を占めていた。患者の居住地域は東京23 区内が多かった(72.1%)。3 .来院動機は齲蝕治療が最も多く,全体の35.8%を占めていた。歯数異常は11.0%,歯列不正,外傷はそれぞれ10.9%であった。来院動機によって小児の年齢層がはっきり分かれ,齲蝕治療のピークは3 歳から4 歳であった。外傷は1 歳および2 歳が多く,6 歳以降は歯列・咬合に関するものが多かった。4 .受診年齢や来院動機などの全体的な来院状況の傾向は,平成10 年の調査と類似していた。5 .患者数や紹介数の著しい増加から,都心の大学病院小児歯科の専門的な診断や治療は,保護者のみならず地域連携歯科医からも求められていることが示唆された。
  • 小鹿 裕子, 岩田 美奈子, 浦野 絢子, 荒井 亮, 山頭 亜里沙, 隝田 みゆき, 辻野 啓一郎, 櫻井 敦朗, 大多和 由美, 新谷 ...
    2014 年 52 巻 1 号 p. 54-61
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    近年,小児の齲蝕は減少しているといわれているが,齲蝕処置を希望して大学病院小児歯科を受診する低年齢児は少なくない。地域医療と連携しながら,患者のニーズにあった歯科治療を提供する立場にある大学病院として,低年齢児の齲蝕の実態を把握することは重要である。そこで,平成22 年1 月から平成24年12 月までの3 年間に,東京歯科大学水道橋病院小児歯科を受診した3 歳未満の初診患者のうち,齲蝕処置を希望し,実際に治療を行った117 名について齲蝕罹患状況を調査し,以下の結論を得た。1 .受診した小児の76.9%は東京23 区内に居住していた。85.5%が1 歳半以上の小児であった。2 .齲蝕症第二度(C2)あるいは齲蝕症第三度(C3)を有する小児が同数で,全体の約40%ずつ存在した。1 歳半未満ではC3 の割合が11.8%であったが,1 歳半以上2 歳未満では39.4%,2 歳以上では約半数と,1 歳半以降にC3 を有する小児の割合が高くなった。3 .dmf 歯率50%以上の小児が全体の約4 分の1 を占めていた。dmf 歯率が高い小児は齲蝕の程度も重症化する傾向にあった。4 .紹介により来院した小児は,全体の約6 割であった。齲蝕症第一度(C1)およびC2 の小児では,半数以上が紹介なしで来院していたのに対し,C3 以上の小児では,約8 割が紹介で来院していた。5 .1 歳半で卒乳していない小児の齲蝕は卒乳していた小児に比べ重症化し,更にdmf 歯率も高くなる傾向があった。
  • 村田 周子, 下川 仁彌太, 庄井 香, 宮新 美智世
    2014 年 52 巻 1 号 p. 62-68
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    外傷による脱落歯の再植において,その予後を左右する重要な因子の一つは,歯に残存している歯根膜細胞の活性度である。そこで,国内で市販されている2 種類の歯の保存液が歯根膜細胞の活性度に及ぼす影響を比較検討する目的で,以下の研究を行った。使用した保存液は,実験群としてTeeth Keeper NEO(TN)およびDentSupply(DS),対照群として生理食塩水(生食)および細胞培養液(培地),pH 緩衝剤であるHEPES を添加した生食(生食+HEPES),HEPES を添加した培地(培地+HEPES)である。ヒト若年者歯根膜細胞をこれら各保存液中で0.5~24 時間静置して各作用時間における細胞数(Cell Counting Kit-8 による吸光度測定)および細胞形態の変化を観察した。また,各作用時間における溶液のpH 変化も測定した。生食群や生食+HEPES 群は作用開始後早期に吸光度が著しく低下した。歯根膜細胞の形態は,全溶液のうち最も早期に紡錘突起の収縮や短縮が進み,球状化した細胞も多く見られた。また,培地群は12 時間作用以降吸光度の急激な減少が認められ,その時のpH は9 まで上昇していた。培地+HEPES 群は12 時間作用以降も吸光度の変化が少なく,歯根膜細胞の生存が示唆された。この時HEPES により培地のpH 上昇は8.3 以下に抑えられていた。TN 群とDS 群では吸光度が経時的に減少したが,短時間(6 時間)では細胞活性は保たれており,実験期間中両者の間に有意差は見られなかった。
臨床
  • 布施 晴香, 島田 幸惠, 船津 敬弘, 宗田 友紀子, 入江 太朗, 美島 健二, 井上 美津子
    2014 年 52 巻 1 号 p. 69-76
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    顎口腔領域に発生する小児の顎骨嚢胞は含歯性嚢胞の発生頻度が高く,好発部位は下顎小臼歯である。今回著者らは,11 歳男児の下顎左側側方歯部に発症した連続した歯原性嚢胞により側方歯3 歯の転位をみた1 例を経験したので報告する。患児は11 歳7 か月の男児で,下顎左側第一小臼歯の異所萌出を主訴に来院した。パノラマエックス線写真所見より下顎左側犬歯,第二小臼歯が顎骨内に埋伏し,歯冠周囲に透過像を認めた。これらの透過像は,根管治療が施されている下顎左側第一乳臼歯の根付近および萌出している第一小臼歯の歯根周囲の透過像と連続していた。歯科用コーンビームCT(Cone Beam Computed Tomography(CBCT))所見では嚢胞様透過像の中に小塊状の不透過像が認められた。処置は全身麻酔下で嚢胞の摘出を行った。嚢胞は病理組織学検査にて含歯性嚢胞と診断された。術後は犬歯,第二小臼歯ともに萌出した。本症例は,埋伏している下顎左側犬歯歯冠部から第一大臼歯近心側までの範囲に嚢胞が拡がっており,萌出途中の第一小臼歯の歯根周囲から根尖部にまで達していた。そのため,当初は保存を検討していた第一小臼歯を抜去して嚢胞摘出術を施行した。嚢胞に対する治療法は,その位置や形状,埋伏歯の状態を含めた様々な要因を考慮して選択する必要がある。
  • 高木 愼, 田村 博宣, 矢部 孝
    2014 年 52 巻 1 号 p. 77-82
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    エナメル上皮線維歯牙腫は歯原性上皮と歯原性間葉組織からなる軟組織中にエナメル質や象牙質等の硬組織形成をみる比較的まれな良性歯原性腫瘍である。今回われわれは上顎右側大臼歯部に発生した本腫瘍の1 例を経験したので報告する。症例は9 歳男児,初診:2011 年7 月,既往歴に特記事項なく,現病歴は近医でのパノラマエックス線写真で上顎右側臼歯部に拇指頭大で内部が不均一なエックス線不透過像を含む境界明瞭な嚢胞様エックス線透過像の病変とその病変により上方に圧迫され,埋伏した上顎右側第二大臼歯を指摘され,当科受診した。現症は顔貌左右対称,口腔内所見は上顎右側臼歯頬側部に骨様硬の膨隆を認めた。処置および経過は,2011 年8 月上顎右側歯牙腫の臨床診断のもと全身麻酔下で腫瘍摘出術を施行し,埋伏右側上顎第二大臼歯の萌出を期待し,開窓した。病理組織学的にエナメル上皮線維歯牙腫の確定診断を得,10 か月後,埋伏歯は,萌出傾向であった。今後も長期に経過観察予定である。
  • 小峰 和矩, 寺内 和希子, 髙森 一乗, 岡 俊一, 白川 哲夫
    2014 年 52 巻 1 号 p. 83-89
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    ラテックスアレルギーは,IgE 抗体とアレルゲンの反応に起因する即時型アレルギーとされる。ラテックスアレルギー患者の30~50%にクリやバナナ,アボカドなどのフルーツとの交差性が知られており,これらを総称して,ラテックス・フルーツ症候群と呼ばれている。今回我々はラテックス・フルーツ症候群患児の歯科治療を経験したので報告する。症例は,3 歳6 か月女児で近医歯科にて齲蝕を指摘され来院した。患児は多数の食物に対してのアレルギー,気管支喘息,アトピー性皮膚炎の既往を認め,2 歳3 か月時に小児科にてラテックス・フルーツ症候群と診断された。歯科治療時の使用材料,薬剤にアレルギー反応が生じることを懸念し,材料ならびに薬剤のパッチテストを大学病院皮膚科に依頼し,テスト結果が陰性であることを確認した。処置は,患児のバイタルサインを歯科麻酔科医によるモニタリング下にて,局所麻酔を併用し,コンポジットレジン修復を行った。処置中にアレルギー反応を疑う所見は認めず,歯科治療は終了した。その後の経過も良好である。アレルギーは日常の診療にて医療関係者が遭遇する可能性があり,その中でも最も重篤なアナフィラキシーショックにおいては,適切かつ迅速な初期対応を行わないと死に至る危険もある。本症例ではアナフィラキシーを生じるリスクが高かったことより,齲蝕治療に先立ち,使用する歯科材料に対してのパッチテストを行い,歯科麻酔科によるモニタリング下にて治療を行った。これらは治療に伴うアレルギー反応に対して患者や保護者の精神的不安を和らげ,術者は治療に専念でき,処置を安全に行う上で重要であったと思われる。
  • 平田 涼子, 海原 康孝, 三宅 奈美, 櫻井 薫, 光畑 智恵子, 天野 秀昭, 香西 克之
    2014 年 52 巻 1 号 p. 90-96
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder 以下ASD)の小児には,知的障害の有無に関わらず整理統合が困難で視覚優位である者が多い。また,ASD 児の能力には個人差があるため,支援者は障害特性に配慮した個別対応が要求される。ところが,歯科診療時におけるASD 児の対応法に関する情報はいまだ不十分である。そこで,当科にて歯科診療時に行ったASD 児への個別対応のうち効果的であったものを報告する。症例1 初診時2 歳11 か月,男児,高機能自閉症・AD/HD(注意欠如・多動性障害)この患児は,3 歳時既に全ての平仮名と数字が読めた。そこで,診療に対する混乱の除去のため,文字情報で予定を可視化した(Word Schedule)。予定の最後を「ごほうび」と記し,強化子として患児の好きなキャラクターの塗り絵を使用した。症例2 初診時6 歳11 か月,男児,自閉症(知的障害を伴う)絵カードを予定の順に並べ(予定の構造化),入室前に患児へ見せた。治療のステップが1 つ終わる度に,褒め言葉と同時に○のサインボードを見せた。これは,言葉だけでなく視覚的にもできたことや褒められたことを認識できるようにするための援助である。以上の対応により,スムーズに診療が行えた。このように,ASD 児の歯科診療の際には,個々の発達レベルや行動を十分に観察した上で個別化された支援方法により対応することが有効と考えられた。
  • 鴨下 亮平, 吉田 祥子, 竹村 雅美, 石田 千晶, 鈴木 安住, 西山 未紗, 佐藤 桃子, 白川 哲夫
    2014 年 52 巻 1 号 p. 97-102
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    平成15 年1 月から平成24 年12 月までの10 年間に,日本大学歯学部付属歯科病院小児歯科を受診した患者のうち,全身麻酔下で歯科治療を行った症例を対象に統計調査を行い,以下の結果を得た。1.症例数は男性199 名,女性103 名であり,治療時の平均年齢は5 歳4 か月であった。2.対象患者の内訳は,有病小児あるいは歯科治療への協力度が乏しい小児が246 例,障害児が37 例,通院困難な健常児が28 例であった。障害の内訳は,自閉症20 例,精神遅滞12 例,Down 症候群が1 例,精神遅滞にてんかんを合併した症例が1 例,精神遅滞に脳性麻痺を合併した症例が1 例,その他が2 例(18 p症候群,ウィリアムス症候群)であった。3.日帰り全身麻酔が222 症例と最も多く,続いて2 泊が52 症例,1 泊が34 症例,3 泊以上が3 症例であった。また平均処置時間は2 時間21 分であった。4.全身麻酔下歯科治療での1 症例あたりの平均処置歯数は10.7 歯であった。主な内訳は,コンポジットレジン修復が5.4 歯,抜髄処置が1.6 歯,抜歯が1.4 歯であった。当院での全身麻酔下歯科治療は近年症例数が増加しており,主に多数歯齲蝕の症例について,低年齢児などの不協力児,有病小児,障害児,通院の継続が困難な小児などに幅広く適用されていることが示された。
  • 小林 奈未子, 藤田 晴子, 菊地 恭子, 石川 雅章
    2014 年 52 巻 1 号 p. 103-109
    発行日: 2014/02/25
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    当院小児歯科外来において,家族性歯肉線維腫症,特発性歯肉線維腫症と診断された2 症例の長期経過を報告した。症例1 は2 歳10 か月の男児で歯肉腫脹を主訴に来院した。家族歴として父親と祖母(父方)にも同様の症状が認められた。口腔内所見において歯肉の増殖は著しく,歯冠は切縁や咬頭の一部のみ確認できる程度であった。病理所見では,線維芽細胞の増生はみられず,密な膠原線維の増生と軽度の炎症性細胞浸潤が認められた。本症例1 を家族性歯肉線維腫症と診断した。症例2 は10 歳0 か月の女児で症例1 と同様に歯肉腫脹を主訴に来院した。家族歴はなく口腔内所見での歯肉増殖は歯冠の1/2 から2/3 を覆う程度であった。本症例2 を特発性歯肉線維腫症と診断した。処置は複数回に分けて歯肉切除術を行い,定期的に口腔衛生指導を行った。2 症例ともに部分的に歯肉増殖の再発が認められ,再切除を行った。その後,患児のプラークコントロール技術が向上するとともに良好な予後が得られた。本疾患について長期的な口腔衛生管理が重要なことが再確認できた。
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