抄録
ラテックスアレルギーは,IgE 抗体とアレルゲンの反応に起因する即時型アレルギーとされる。ラテックスアレルギー患者の30~50%にクリやバナナ,アボカドなどのフルーツとの交差性が知られており,これらを総称して,ラテックス・フルーツ症候群と呼ばれている。今回我々はラテックス・フルーツ症候群患児の歯科治療を経験したので報告する。症例は,3 歳6 か月女児で近医歯科にて齲蝕を指摘され来院した。患児は多数の食物に対してのアレルギー,気管支喘息,アトピー性皮膚炎の既往を認め,2 歳3 か月時に小児科にてラテックス・フルーツ症候群と診断された。歯科治療時の使用材料,薬剤にアレルギー反応が生じることを懸念し,材料ならびに薬剤のパッチテストを大学病院皮膚科に依頼し,テスト結果が陰性であることを確認した。処置は,患児のバイタルサインを歯科麻酔科医によるモニタリング下にて,局所麻酔を併用し,コンポジットレジン修復を行った。処置中にアレルギー反応を疑う所見は認めず,歯科治療は終了した。その後の経過も良好である。アレルギーは日常の診療にて医療関係者が遭遇する可能性があり,その中でも最も重篤なアナフィラキシーショックにおいては,適切かつ迅速な初期対応を行わないと死に至る危険もある。本症例ではアナフィラキシーを生じるリスクが高かったことより,齲蝕治療に先立ち,使用する歯科材料に対してのパッチテストを行い,歯科麻酔科によるモニタリング下にて治療を行った。これらは治療に伴うアレルギー反応に対して患者や保護者の精神的不安を和らげ,術者は治療に専念でき,処置を安全に行う上で重要であったと思われる。