抄録
上顎前歯部埋伏過剰歯は比較的遭遇する機会の多い疾患で,多様な障害を引き起こすことが知られている。一方で,適切な抜歯時期などについては明確な見解が得られていない。今回著者らは,2005 年1 月から2012 年12 月までの7 年間に小児歯科専門医院である当院を受診し,抜歯が必要と診断され外科処置を施行した132 例を対象として臨床的検討を行った。その結果,当院で扱った上顎前歯部過剰歯は男女比は2 対1 で男児に多く,部位は上顎前歯部正中が10.9%,上顎前歯部右側が44.9%,上顎前歯部左側が44.2%であった。また,萌出方向は順生が23.1%,逆生が71.4%,水平が5.5%であった。埋伏過剰歯数は1 歯が82.5%,2 歯が16.7%であり,3 歯は0.8%であった。さらに,パノラマエックス線写真上の埋伏過剰歯の位置については,鼻腔底下縁から歯槽骨頂までの距離に基づいて鼻腔底からそれぞれTypeⅠ~Ⅲとして垂直的深度を評価した。過剰歯の深度分類と手術時の平均年齢を比較すると,TypeⅠは全体における19.9%で平均年齢は7 歳7 か月,TypeⅡは全体における49.4%で平均年齢は6 歳3 か月,TypeⅢは全体の30.7%で平均年齢は6 歳5 か月であり,全過剰歯数の約80%がTypeⅡとTypeⅢに位置していた。これらの結果より,低年齢ほど浅い深度にある傾向が認められることが分かった。