抄録
未曾有の被害をもたらした東日本大震災から3 年以上の年月が経過した。市街地の復旧・復興とともに周囲の関心は薄らぎ,記憶の風化が懸念されている。そのような中,災害時要援護者である子どもに対する歯科保健医療支援に関する研究・報告はあまり行われていないのが現状である。そこで本研究は,大規模災害時の歯科保健医療支援体制構築に向けた小児への歯科保健医療支援の指針を示すために全国29 大学歯学部及び歯科大学の小児歯科学講座に対して,東日本大震災時の歯科保健医療に関するアンケート調査を行い,回答のあった25 講座(回答率86%)についてその内容を分析・検討した。その結果,東日本大震災時の各大学小児歯科学講座が行った歯科保健医療支援活動を通じて,各々の講座が可能な限り被災地支援に携わっていたことが明らかとなった。しかしながら,講座ごとに支援の内容や方法に関する判断が委ねられているケースも多かったことから,大学小児歯科学講座がその特性を活かし,大規模災害時の子どもの歯科保健医療支援・活動の拠点として機能するために全大学小児歯科学講座が共通して運用すべき災害時歯科保健医療支援指針(災害時における口腔保健指導方法・応急処置,歯科を通じた子どもの精神的フォロー,災害時の要支援内容の発信手段など)が必要であると考えた。我々はアンケート調査の結果ならびに考察から,その指針(案)を作成した。