小児歯科学雑誌
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総説
Streptococcus mutansのグルカン結合タンパクCにおけるデキストラン結合領域の解析
髙島 由紀子
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2017 年 55 巻 3 号 p. 352-357

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抄録

齲蝕病原性細菌 Streptococcus mutansの表層には,齲蝕の発生に関与するグルカン結合タンパク(Glucan­binding proteins : Gbps)が存在する。これまでのところ,4種類(GbpA, GbpB, GbpC, GbpD)が報告されており,それぞれの遺伝子配列も決定されている。そのうちgbpC遺伝子がコードするGbpCタンパクは,他のGbpと比較してデキストラン結合能がもっとも高く,齲蝕原性に最も強く関与している。しかしながら,グルカンとの結合メカニズムは明らかとなっていなかった。そこで,バイオインフォマティクスの手法を用いてGbpCのグルカン結合領域を特定することとした。はじめにgbpC遺伝子より推定高次構造を構築し,結合ドメインと推定されるGB1からGB5の5つの領域を抽出した。これらの領域を含むリコンビナントGbpC断片タンパク(rGbpC)とこれらの領域を欠失させた変異株を作製した。rGbpCを用いてデキストラン結合能を調べた結果,gbpC遺伝子の上流に位置するGB1, GB3, GB4, GB5の領域を含むフラグメントBは,下流に位置するGB2を含むフラグメントCと比較してその値は高いものであった。さらに,GB4を欠失させた変異株(CDGB4)のデキストラン結合能は他の領域を欠失させた変異株と比較して有意に低下しており,その値は,GbpCを欠失させた変異株(CD1)と同程度であった。さらにこれらの株により形成されたバイオフィルムの構造を共焦点レーザー顕微鏡により比較したところ,CDGB4とCD1の構造はMT8148のものと比較して密度が低下していた。これらのことから,デキストラン結合ドメインはgbpC遺伝子内のGB4の領域であるDPTKTIFの7つのアミノ酸を中心活性として機能していることが示された。

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© 2017 日本小児歯科学会
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