2019 年 57 巻 1 号 p. 87-93
近年の歯科医療情勢の変化に伴う診療実態や当科に来科する患児の実態の動向を把握することを目的に,広島大学病院小児歯科(以下当科)において,2011 年度から5 年間の初診患児の実態を調査し,以下のような結果を得た。
1 .2011 年度から2015 年度における5 年間の初診患児は2,500 人であり,どの年も500 人前後であった。
2 .初診患児の年齢分布は,「3 歳以上6 歳未満」が増加,「6 歳以上9 歳未満」が減少している傾向がみられた。
3 .初診患児の居住地は約75%が広島市内であり,調査期間中の5 年間において大きな変化は認められなかった。
4 .初診患児の主訴の割合は,「齲蝕治療」および「口腔内精査」が有意に増加しており,一方で「齲蝕予防」および「歯並び」が減少していた。
5 .紹介患児が増加し,外来診療棟が移転した2013 年度以降には,約90%の初診患児が紹介状を有して来院した。また,移転後は当院医科からの院内紹介が有意に増加した。
6 .院内医科領域からの紹介患児の全身疾患の内訳を比較すると,移転後には「固形腫瘍」,「造血器腫瘍」,「非腫瘍性血液疾患」および「神経系疾患」が増加していた。
以上のことから,三次医療機関における小児歯科としての役割を果たしていることを確認し,今後も地域医療に貢献していく必要性を再認識した。