障害児や有病児への理解の深まりから社会環境や福祉制度の整備が進みつつあるが,障害や全身疾患をもつ児が地域において疾病予防も含めた歯科医療を受けられる環境がいまだ十分にあるとは言えず,実情に応じた環境整備が求められる。そこで,今回,平成25年度から平成29年度に当科を受診した児のうち障害児・有病児の5年間の初診時実態調査を行い,過去に当科で行った調査と比較し,近年の変化を検討した。初診患者1,301名のうち,障害児・有病児の割合は49%であった。障害児・有病児640名のうち,本調査では身体障害,感覚器障害,内部障害,発達障害,痙攣性疾患,先天性奇形,染色体異常,遺伝子異常に着目し分析を行った。その結果,延べ323名が該当し,内訳は身体障害4%,感覚器障害11%,内部障害15%,発達障害34%,痙攣性疾患8%,先天性奇形14%,染色体異常8%,遺伝子異常6%であった。主訴は,齲蝕が最も多く31%であった。次いで,口唇口蓋裂17%,定期管理14%,外科処置11%,咬合誘導8%,外傷4%,摂食訓練3%と続いた。紹介状を持参した児は93%,持参しなかった児が7%であった。居住地別患者数は,市町村でみると当院の位置する徳島市が37%で最も多かった。次いで阿南市10%,鳴門市8%であった。徳島県外からの来院は9%であった。過去の調査と比較し,障害児・有病児の割合は増加していた。障害児・有病児における歯科的課題および取り巻く環境を患児側や医療従事者側のそれぞれの立場に立って分析していくことによって,両者のニーズに応えるよう努めていかなければならない。