2022 年 60 巻 1 号 p. 33-40
過剰歯の発生は上顎前歯部に多く,永久歯の萌出障害等の原因となるため,小児歯科の臨床の現場で対応する頻度は高い。今回,上顎前歯部の過剰歯を抜去後,同一部位に再び埋伏過剰歯が出現した稀な2例を経験したので報告する。
1例目は,6歳2か月,男児。順生の萌出過剰歯および埋伏過剰歯による永久前歯の萌出障害のため,全身麻酔下にて過剰歯2本を抜去した。その後,永久前歯の萌出状態の確認を行っていたが,処置24か月後に再び同部位に埋伏過剰歯1本を認め,全身麻酔下にて摘出を行った。その後,上顎左側中切歯の自然萌出は困難と考え,開窓,牽引処置を行い,現在良好な永久歯咬合の獲得に向けて継続して管理している。
2例目は,4歳8か月,男児。上顎正中部に順生過剰歯1本の萌出を認め,上顎右側中切歯歯胚が捻転していたことから通常下にて過剰歯を抜去した。その後,定期検診を継続し,処置24か月後に同部位に埋伏過剰歯2本が再び認められたため,全身麻酔下にて摘出を行った。その後は,永久前歯の自然萌出傾向を認めた。
複数の過剰歯を認めた報告は多数あるが,本症例のように過剰歯が再び同部位に発症した報告は僅かであり,きわめて稀な症例と考えられた。また,2症例共,約2年後に確認された過剰歯により再び永久歯の萌出障害を認めたことから,過剰歯抜去後も長期に歯の萌出状態を確認し,適時エックス線検査で経過を確認する必要性があると考えられた。