2022 年 60 巻 3 号 p. 122-128
小児期の過剰歯は上顎前歯部に多くみられるが,下顎小臼歯部の過剰歯は比較的まれである。小臼歯部の過剰歯は前歯部に比べ発育が遅く,診査・診断が困難である。今回,われわれは下顎右側小臼歯部にみられた過剰歯の症例を経験したので報告する。
患児は近医歯科で齲蝕歯精査のために撮影したエックス線撮影で小臼歯部に過剰歯様の硬組織を認め当科に紹介された。
初診時年齢は4歳8か月であり,咬合発育段階はHellmanのⅡA期を呈し,下顎左側乳臼歯部には歯髄腔に近接する齲蝕が確認できた。
パノラマエックス線画像では下顎右側小臼歯の歯胚の上部に過剰歯様の硬組織を認めたが,歯胚が形成段階であり小臼歯と過剰歯の詳細が不明確であった。
まずは臼歯部の齲蝕治療を優先し,定期的な管理を実施し,小臼歯の発育を待って交換期に対応することとなった。
8歳8か月時に患児の咬合発育段階はⅢB期となった。パノラマエックス線画像では第一乳臼歯および第二乳臼歯には歯根の吸収がみられ,CBCT画像において過剰歯や隣在歯の詳細が確認でき,小臼歯の萌出障害をきたしていることから過剰歯を抜去した。
術後の経過は良好であり,2か月後には下顎右側第二小臼歯の萌出が確認できた。