小児歯科学雑誌
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原著
血友病患児の口腔衛生状態に関する実態調査
秋友 達哉新里 法子臼田 桃子亀谷 茉莉子日下 知浅尾 友里愛小笠原 朋子中野 将志岩本 優子太刀掛 銘子光畑 智恵子野村 良太香西 克之
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2022 年 60 巻 3 号 p. 93-98

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抄録

血友病は易出血を主徴とする疾患であり,罹患者に観血的な歯科処置を行う際には術前に血液凝固因子の補充を行うなどの対応が必要となる。そのため,血友病患児に対しては,定期的な歯科受診により口腔疾患の予防に努め,可能な限り観血的処置を避けるよう努めることが重要となる。今回われわれは,当院小児血友病包括外来に参加した血友病患児を対象として,血友病患児の口腔衛生状態に関する実態調査を行った。

対象とした血友病患児は,2歳2か月から17歳11か月まで(平均年齢9歳6か月)の男児30名,女児1名の計31名であった。齲蝕罹患状態を同年代の健常な児童と比較すると,血友病患児は齲蝕保有者率(df・DMF者率)および平均齲蝕歯数(dft・DMFT)において高い値を示した。また,歯周状態に関しては,多くの血友病患児に歯肉出血や歯石沈着等の所見を認めた。質問紙を用いた調査より,医科および歯科の両主治医から歯科受診の必要性について説明を受けた血友病患児の割合は,それぞれ半数以下にとどまっていた。

以上の結果から,血友病患児の口腔衛生状態は同年代の健常な児童と比較して齲蝕罹患状態・歯周状態ともに不良な状態であった。また,医療従事者からの口腔疾患の予防に関する啓発についても不十分であった。今後は,血友病患児が良好な口腔衛生状態を獲得・維持できるよう,医療連携体制の一層の充実が望まれる。

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© 2022 日本小児歯科学会
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