小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
混合歯列期前期における下顎切歯配列状態と乳歯列期の歯列形態およびその後の歯列弓成長変化との関連について
岩瀬 泉
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 19 巻 1 号 p. 1-21

詳細
抄録
下顎4切歯が萌出完了した時期,整って配列する群(正常群)と,叢生を伴って配列する群(叢生群)で,歯冠の形態,乳歯列期の歯列形態,および成長による歯列弓変化がどの様に違うのかを比較検討し,さらにそれらが両群の配列状態の差とどの様にかかわり合うかを考察した.資料は男子14個体,女子15個体の連続歯列石膏模型を用いた.
その結果,歯冠の形態では,永久切歯の形態に差が認められ,叢生群では近遠心径に比べその唇舌径が小さい事が知られた.乳歯列期の歯列形態では,空隙の有無に差があり,とくに下顎前歯部ではその差が特徴的で正常群では隣接歯間に空隙があるにもかかわらず,叢生群では前歯は叢生状態にある事が知られた.さらに上下顎前方部長径,下顎前方部の広さに差が認められ,叢生群の方が長径は短く,広さは狭い事が知られた.歯列弓の成長変化では,幅径の変化に差は認められず,長径とくに前方部長径の変化に差が認められた.すなわち,上顎では正常群の変化が叢生群に比べ大きく,下顎では叢生群の減少傾向が強い事が知られたが,下顎での変化は中切歯萌出位置に関連すると解釈された.さらに両群の配列状態に差を生じさせるものを因子分析法によって考察したところ,叢生群では,下顎切歯の唇舌径は切歯の萌出位置と関係することにより,また乳歯列期の下顎前方部長径おおよび前方部の広さはその状態自体が重要な意味を持ち,正常群では乳前歯部の空隙量が重要な意味を持つ事が示唆された.
著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
次の記事
feedback
Top