小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
血友病児の口腔出血管理について
船越 禧征加護 朱美中野 玲子有田 憲司稗田 豊治
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 19 巻 2 号 p. 287-291

詳細
抄録
血友病A児4名,血友病B児1名,計5名に対し抜歯処置を含めた各種歯科処置を行なった。年齢は全例5歳以上で,重症度は第VIII因子量が2.7%-5%の中等度3名,20%の軽症度1名および第IX因子量2.8%の血友病B児1名である。処置内容は全抜歯数17歯,生活歯髄切断,レジン充填,乳歯冠装着などを含めた一般歯科処置12歯であった。抜歯理由は齲蝕により歯冠崩壊が著しく歯肉炎を生じ,咀嚼時に出血をきたした12歯および交換障害により出血を生じた5歯であった。抜歯にあたっては術前より術後完全止血に至るまで線溶活性抑制と出血量軽減の目的でTransamine50-60mg/kg/dayの全身投与を行なった。局所止血法として抜歯窩にスポンゼルの小片を充填圧入し,圧接ガーゼにて圧迫止血し,局所完全止血確認後,splint床にて創部の保護を行なった。補充療法として第VIII因子レベルを30%以上を目標として術前抗凝固剤(クリオブリン)の投与を開始しVI,I術I後は第VIII因子レベルを20%以上維持するように努めた。血友病児ならびに保護者は出血を恐れるあまり,口腔内清掃は不良であることが多く,そのため齲蝕により残根となり,歯肉内に埋入した歯根が歯肉を刺激して歯肉炎症をきたし,それが原因となって出血症状を助長しやすい。このことから日常の口腔衛生指導に十分注意を払うよう強調すると同時に,齲蝕の早期発見,早期治療に努めることが最も重要である
著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top