小児歯科学雑誌
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乳歯咬合期カニクイザル歯帯管の形態学的研究
-とくに頬(唇)・舌断面像について-
峰岸 秀夫
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1981 年 19 巻 2 号 p. 339-354

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抄録

幼児の顎骨をみると,乳歯の舌側にそれぞれ一つずつの小さな孔が認められる。この小孔(歯帯孔)は極めて顕著であり,また古くよりその存在は永久歯の萌出に関連があると示唆されながら,意外にも専門家の注意をひかなかった。とくに歯帯孔と永久歯歯胚骨包を結ぶ骨性の管腔である歯帯管について,詳細かつ系統的に研究した論文はまだ全くみあたらない。そこで本研究は,乳歯咬合期カニクイザルのさらした顎骨をポリエステル樹脂で包埋,頬(唇)・舌断を行い,立体双眼顕微鏡と万能投影機で観察し,次の知見を得た。切歯歯帯管は,80%が円柱形で短く,やや太い。骨包に対する位置は下顎中切歯が90%が舌側位で,他の切歯は骨包頂上と舌側とがほぼ半数ずつであった。これらのことから切歯歯帯管は肩張り形の壺における短い首の部分に相当し,歯胚の位置や方向とともに歯槽部の改造現象が強く感じられる。犬歯歯帯管は,上顎は円柱形と円錐形がほぼ半数ずつで,下顎は約70%が円錐形であり,長さ,太さは最大で,大部分が骨包頂上に位置する。これらのことから犬歯歯帯管は円錐形の長い鶴首状を呈し,歯胚を誘導する歯帯管本来の姿を表している。小臼歯歯帯管は60%が円柱形であるが,円錐形も多く,曲円柱形,曲円錐形もみられる。この時期の小臼歯歯帯管は多様性で,まだ一定の形式を備えるに至らず,歯胚のmigration現象を示唆している。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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