小児歯科学雑誌
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乳歯齲蝕と日常生活における親子関係に関する心理学的研究
菅原 博子
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1981 年 19 巻 3 号 p. 469-477

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抄録
仙台市内の保育所,幼稚園の幼児歯科検診を行い,あわせてムシ歯の多い幼児の親とムシ歯の少ない幼児の親を対象に質問紙法による親子関係調査,期待度調査,母親の性格検査を実施し,乳歯齲蝕との関係を研究した結果,以下の結論を得た。
1.ムシ歯の多い幼児はムシ歯の少ない幼児に比較し,一人遊びや親との遊びが少なく,テレビを1時間以上みているものが非常に多かった。
2.ムシ歯の少ない幼児と親との関係はムシ歯の多い幼児のそれと比較し,強制的,説論的傾向がやや強く,放任傾向がやや弱い,過保護傾向には差がみられなかった。
3.ムシ歯の多い幼児の親はがまん強い子,誠実な子,明朗な子,思いやりのある子,根気のある子になるよう期待し,ムシ歯の少ない幼児の親は根気のある子の代りに,意欲のある子になるよう期待していた。
4.ムシ歯の多い幼児の親はムシ歯の少ない幼児の親に比べて,平凡型であり,情緒的安定,社会的適応性が高いといえる。
以上の結果を総合的に判断すると,ムシ歯の多い幼児の親は育児に対し,のん気,楽観的,外向的そして社交的であり,一方ムシ歯の少ない幼児の親は説諭的で,自分の考えで工夫したり,規制したり,手にかけて幼児を扱うことが多いといえる。なお因子分析によっても特に衛生関係の場面において同様の傾向がみとめられた。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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