1982 年 20 巻 1 号 p. 151-157
咬合干渉が存在した場合, 小児咀嚼筋がどのような影響を受けるかについて検討を行った.被検児はHellmanのDental Age II A期の小児8名で, 下顎第二乳臼歯の左右いずれかに, 厚さ約 350μmの銀合金製Metal Overlay(MO)を装着し,MO装着前, 装着7日後,MO除去7日後の計3回, 筋電図記録を行った.筋電図は, 頭部後屈により誘発される緊張性頸反射時の活動電位を側頭筋前腹,咬筋より導出し, 干渉側と非干渉側とを比較検討し, 以下の結論を得た.
1. 咬合干渉による不快症状は1名を除いて1日以内に消失し,疼痛を訴える被検児はいなかった.
2. 咬合干渉の付与による筋の非均衡は5名に出現し, いずれも, 干渉側の筋活動が非干渉側より大きくなる傾向がみられた.
3. 筋電図波形の等時性では,干渉側が非干渉側より早期に活動を開始する傾向がみられ, 筋群では咬筋にその傾向が著しかった.
4. 咬合干渉による咀嚼筋への影響について咀嚼筋の筋活動の大きさと等時性の両者から判定した場合, 被験児8名のうち7名に影響がみられた.また, 咬合干渉の影響を受け易い小児とほとんど受けない小児とがあり個人差が認められた.