上顎20症例,下顎21症例を用いて,永久切歯の配列を正常,前傾,叢生の3群にわけ,切歯交代期に出現する前歯部の不正について,その要因がどこにあるのか比較検討し,次の結果を得た.
1)永久側切歯が正常萌出した43例中,不正に移行した症例は13例みられたが,切歯萌出後,不正から正常に移行した症例は36例中2例しかみられなかった.
2)乳歯および永久歯の切歯歯冠近遠心幅径総和は,正常に比べ,前傾,叢生の症例の方がわずかに大きい傾向にあった.
3)乳歯と永久歯の切歯歯冠近遠心幅径総和の差は,上顎では正常に比べ,前傾,叢生の症例の方が大きい傾向がみられた.下顎では,正常に比べ,前傾,叢生の症例の方がわずかに大きい傾向がみられた.
4)乳犬歯間幅径は,上顎では叢生,正常,前傾の順に,下顎では叢生,前傾,正常の順に大きい傾向にあった.
5)乳犬歯間幅径の成長量は,上下顎とも正常,前傾,叢生の間で差はみられず,上顎で平均3.3mm,下顎で平均2.6mmであった.
6)第1乳臼歯より前方部の生理的空隙総和においては,上下顎ともに正常に比べ叢生の方が小さく,両者の間に有意の差を認めた.また,霊長空隙のみにおいても,正常と叢生の間に有意の差を認めた.
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