1982 年 20 巻 1 号 p. 184-187
Stevens-Johnson症候群は,原因不明の熱性発疹症の1つであり,いわゆる皮膚粘膜眼症候群のうち多型滲出性紅斑症候群に属する疾患である.本症例の男児は,7歳時に発症し,13歳の現在も大阪大学医学部付属病院眼科にて治療中である.12歳時に,左側下顎臼歯部(冷水痛の既往あり)精査を主訴として,本学小児歯科を受診した.初診時の口腔内診査では,広範な永久歯歯頸部の黄褐色の着色と軽度の歯牙形成不全,および〓をく除全歯牙に歯頸部齲蝕が認められた.しかし,本症候群に特徴的な口腔粘膜の病変はみられなかった.X線写真からは,〓を除く全永久歯に短根がみられた.本症例における短根歯の発現原因は,本症候群の発症と,それに伴なう何らかの機作による,歯根の発育障害あるいは成長の停止と考察された.