抄録
歯の萌出に伴なう歯肉の上皮と固有層の形態変化を観察する目的で,3歳より12歳までの小児の歯肉45例を歯の萌出程度により4 Stageに分類し,超薄切片法およびプリーズ・フラクチャー法を用い観察,検討を行ない次のような結果を得た.
1 歯の萌出が進むにっれまず細胞間隙の拡大が起こり,gap junctionなどの膜構造が不明瞭となり,ついで細胞膜の部分的崩壊そして細胞間接合装置の局所的な集積がみられ,最終的に崩壊するものと推察された.
2 基底板は隣接細胞間隙が大きく離開した時期でも観察され, hemidesmosome の消失は口腔上皮と退縮エナメル上皮との癒合直前まで起こらなかったことから,癒合と同時に基底板やhemidesmosomeが急速に消失するものと思われた.
3 有棘層上部, 穎粒層および角質層の細胞質中と細胞間隙に観察されたmembran ecoating granuleは,歯の萌出が進むにつれ,その数は急激に減少することが認められた.
4 角質層は表皮に観察されるような角化は認められず,類角化であった.また角質層の細胞層の数は歯の萌出直前期において増加する傾向がみられた.