抄録
グラスアイオノマーセメント(Fuji Ionomer Type-II)の乳歯歯髄への影響について幼犬11頭の乳歯54歯を用い,窩洞形成を行ない本セメントを填塞した.幼犬は3日から4週の各期間飼育し,薬殺した.試料は通法に従いセロイジン切片を作製,H・E染色後検鏡した.経過日数および窩底最薄厚径と病理組織所見との関係について検索し,次の様な結果を得た.
病理成績は,良好29例,概良18例,不良5例であり,不良例は窩底象牙質厚径180μ以下の薄い症例のみであった.経日的には,術後4週になっても炎症性反応が依然認められ,術後象牙質の形成は,術後2週と4週にみられたが15%と少なかった.露髄した2例の病理成績は,共に不良で歯髄反応は強く,壊死が認められた.
本セメントは,カルボキシレートセメントに比べて歯髄に対する刺激性を多少有していると思われた.