1982 年 20 巻 3 号 p. 426-432
日常の臨床において,幼児期に高度の歯周疾患に遭遇することは非常に稀である.著者らは,下顎前歯部の動揺を主訴として来院した男児で高度な歯周疾患を有した一症例を経験し次のような所見を得た.
1.一般所見:患児は脳性小児麻痺児で,脊柱後彎,内反足,内反膝を示し,下肢の強直性関節が顕著であり,筋緊張も強く歩行困難であった.手掌部の皮膚,爪は正常であった.
2.X線所見:化骨には遅れを認めたが長管骨骨幹および骨端の石灰化には異常はなかった.口腔内X線所見では,全歯にわたり歯槽骨の水平的骨吸収を示し,歯根膜腔の拡大を認めた.
3.血液生化学的所見:アルカリフォスファターゼ値は正常であったが,白血球数およびGOT, GPT, IgA, IgM, IgGは高く肝機能障害が疑われた.
4.抜去歯所見:歯冠長は平均値内であったが,歯根長は極度に短小であった.