抄録
第1・第2鰓弓性症候群に属するTreacher Collins 症候群は,顔面領域に先天奇形を有する,極めて稀な疾患である.病因はいまだに明らかにされていないが,遺伝的要因が重視されており,常染色体優性遺伝として記載されている.
今回,われわれは小児歯科外来において,Treacher Collins 症候群と診断された7歳の女児について報告する.家族的な検索から,患児の姉,母,母方祖父の三代にわたって本症候群が認められた.興味ある臨床的所見,および歯科的所見について報告する.
患児は,本症候群の特徴をすべて備えており,Franceschettiらの分類による完全型であった.患児の姉,母にもほとんどの特徴が認められ,患児と同様,完全型と思われる.母方祖父は不完全型であった.口腔内所見として,下顎角の拡大,歯列不正,巨口症などが,患児,母,祖父にみられた.本報告例は,世代の経過とともに臨床的症状が増悪しており,明らかに,常染色体優性遺伝の形式を示した.