小児歯科学雑誌
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上顎前歯部に4本の過剰歯が見られた1症例
盛島 美智子逢坂 亘彦時田 幸子辻川 裕久羽切 恵美子宮本 雄一五嶋 秀男
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1982 年 20 巻 3 号 p. 442-450

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抄録

過剰歯に関する多くの報告がなされているが,過剰歯発生の成因に関しては今日まだ明らかにされていない.過剰歯の好発部位は上顎前歯部が第1位で,全過剰歯例の50~90%に相当している.その発現率は0.3~5%と言われているが,6~8歳に最も多く出現し,萌出する場合よりも,埋伏している場合の方が多く,大部分は1歯である.限局して2歯以上を有する例は稀である.
今回,著者らは,9歳1ヵ月の男児の上顎前歯部に4歯もの過剰歯が限局して現われた極めて稀な症例に遭遇した.家族歴その他に多数の過剰歯発現と関連すると思われる特記事項はなかった.過剰歯と現在歯の関係は, 〓( S : 萌出過剰歯,S´:埋伏過剰歯)であった.1 1は未萌出で過剰歯が萌出遅延の原因となっていると思われたので摘出した.過剰歯の出現部位は,正中部に1歯(S´3),右側舌側口蓋に2歯(S´1,S´2),左側舌側口蓋に1歯(S)であった.1歯(S)は萌出し,3歯は埋伏しその埋伏状態は順生(S´1),逆生(S´3),水平(S´2)各1歯であった.歯冠形態は3錐型(S´2とS´3),4錐型(S),5錐型(S´1)であった.歯根は全て単根で1歯(S´1)の他は完成していた.また,1歯(S´3)に彎曲が見られ,これは正中歯であった.
術後,50日で1 1の萌出が見られたが,正中離開,隣在歯の位置不正,1の舌側傾斜,捻転を伴っていた.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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