小児歯科学雑誌
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上下顎左右側第一,第二乳臼歯の低位乳歯による咀嚼機能障害とその治療
富田 聡竹内 千恵高野 文夫
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キーワード: 低位乳歯, 咀噛機能障害
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1982 年 20 巻 3 号 p. 451-457

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抄録

低位乳歯が同一個体に発現する歯数は,1~2歯程度の場合が多く,多数歯に出現することは比較的稀である.
今回,上下顎左右側の第一,第二乳臼歯8歯すべてが低位乳歯となった小児に対して,乳歯冠といわゆるoverlay dentureを用いて咀嚼機能回復のための治療を行い,その経過について報告した.
初診時の咬合発育は歯齢IICで,乳歯はすべて咬合せず,咀嚼機能障害をきたしていた.低位乳歯は,第一大臼歯および永久歯の萌出により一層顕著となり,臼歯部開咬による著しい咀嚼機能障害をきたした.これに対し,乳臼歯に乳歯冠による歯質保護を行った後に,上下顎にoverlay dentureを装着し,咀嚼機能の改善をはかった.
初診時および2年5ヵ月経過時の頭部X線規格写真のトレース重ね合わせにより,上下顎の第一大臼歯は萌出によって垂直方向の高さを増したが,乳臼歯の位置はほとんど変化せず,骨性癒着をきたした乳歯が隣在歯の萌出と歯周組織の成長によって相対的に低位となることを実証し得たものと考えられる.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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