小児歯科学雑誌
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進行性筋ジストロフィー症の1例
特に歯列弓幅径変化についての経年観察
猪狩 和子松本 文夫千葉 桂子神山 紀久男
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1982 年 20 巻 4 号 p. 598-605

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抄録

進行性筋ジストロフィー症(progressive muscular dystrophy,PMD)は骨格筋の進行性萎縮と筋力低下を特徴とし,遺伝的家族的に発生する原発性変性筋疾患である.歯科領域での特徴として,開咬,歯列弓の拡大,巨舌,咀嚼能力の低下などが報告されている.
著者らは,3歳時PMDと診断された男児において,5歳4ヵ月から10歳まで6ヵ月ごとに得た石膏模型の分析を行ない,次の結果を得た.
1. 機能障害がほとんど現われていない初診時(5歳4ヵ月)上顎歯列弓幅径は標準偏差内の値であったが,すでに下顎歯列弓幅径では増大が見られた.
2. 下顎歯列弓幅径の増大は上顎に先行し,機能障害の進行に伴ない上顎歯列弓幅径の増加が著しくなった.
3. 8歳6ヵ月を境に上顎歯列弓幅径の増加量が下顎を上回るようになった.
4. 上下顎とも,乳犬歯間幅径の増加量は平均と思われた.
5. 乳犬歯より第2 乳臼歯,第2乳臼歯より第1 大臼歯と,より後方歯での歯列弓幅径の増加量が大きかった.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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