小児歯科学雑誌
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齲蝕活動性試験(カリオスタット)の細菌学的ならびに疫学的研究
松村 誠士
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1983 年 21 巻 1 号 p. 107-130

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抄録
新しく開発された齲蝕活動性試験(カリオスタット)の判定結果が細菌学的な要因によってどのように影響されるか,また,本試験法が小児を対象に齲蝕活動性を知る上で有用であるかを検討し,次の結果を得た。
1.S. mutansの5株をカリオスタット試験液に接種したところ,いずれも培養48時間後に試験液のpHは終末pH4.8(+2,黄緑)に低下した。しかし,乳酸桿菌を接種した場合のpH低下パターンは菌株によって異なった。他のレンサ球菌を接種した際,pHは終末pH5.2~5.5(+1,緑)に低下した。
2. 59名の2歳より2.5歳の被験者を対象とした時,齲蝕歯数(def)とカリオスタットの判定結果(C.A.:Caries activity)との相関性(P<0.001)は,defとS. mutansが総生菌に占める割合との関係(P<0.05)や,defとS. mutansが総レンサ球菌に占める割合との関係(P<0.01)より高かった。
3. 121名の1.5歳児を被験者としたときC.A.とdefは1.5歳,2歳,および3歳の時点でおのおのP<0.01で相関した。そして,1.5歳の時点でのC.A.はその後6ヵ月間の増加齲蝕歯数(△def)とP<0.05で相関し,2歳の時点でのC.A.はその後12ヵ月間の△defとP<0.01で相関した。
4. 6歳児から15歳児の425名を被験者としたとき,C.A.と齲蝕重症度指数(CSI)は8歳児を除きP<0.05で相関した。さらに,年齢別のC.A.の平均値の変化は,年齢による平均CSIの変化とほぼ一致した。
以上の所見よりカリオスタットは,小児の齲蝕活動性を判定する方法として価値があると思われる。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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