小児歯科学雑誌
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エナメル質形成不全を伴った遺伝性乳白色象牙質の一症例
斉藤 隆裕落合 伸行谷口 学堤 脩郎大嶋 隆祖父江 鎮雄
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1983 年 21 巻 1 号 p. 152-157

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抄録

遺伝性乳白色象牙質(hereditary opalescent dentin)は象牙質の形成が特異的に阻害される疾患で,象牙質形成不全症(dentinogenesis imperfecta)とも呼ばれる。今回報告した症例は,3歳3ヵ月の男児で,骨形成不全症とは無関係に発症し,残存歯牙がそれぞれエナメル質の希薄と高度の咬耗を伴い,透明度の高い褐色でオパール様の独特な色調を呈し,しかも父,祖父,父方の伯父およびその長男と,明確な遺伝形態を示したため,エナメル質形成不全を伴った遺伝性乳白色象牙質と診断したものである。
本疾患の特徴となっている咬耗は,全歯牙に認められた。歯髄腔の狭窄は,前歯部では明確でなかったものの,臼歯部で著明に認められた。
抜去歯牙を用いて組織学的検索を加えた結果,エナメル質では,その厚さが薄く,小柱の数も少なく走向も不規則であり,象牙質では象牙細管の数が少なく,その走向も不規則であった。
治療として,咬耗の抑制と咬合高径の回復を目的として,乳臼歯に乳歯冠を装着し,その乳歯冠をコーピングとしてオーバーデンチャーを装着した。現在,予後観察中である。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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