抄録
山村へき地の無歯科医地区において,どのような歯科医療対策が最も効果的かつ実現可能であるかを検討するためには,地域の歯科的状況の把握が不可欠である。そこで,岐阜県大野郡白川村の30歳以上の成人を対象として歯科疾患の実能と口腔衛生に対する意識の調査を実施した。その結果,この地域では,若年からの喪失歯数が多く,従って総義歯使用者が多いこと,歯周疾患が多いこと,口腔衛生に対する知識のレベルが低いこと等がわかり,この地域においては,長期的展望のもと,乳幼児期からの予防管理体系を確立し,住民全体の口腔衛生に対する意識の向上をめざす必要が示唆された。同時に本調査は,このような体制を導入するにあたり,住民への動機付けの機会ともなったと考える。