小児歯科学雑誌
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口腔領域におけるPhenytoinの影響に関する研究
1.Phenytoin体液中濃度と歯肉増殖との関係
渡部 茂
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1983 年 21 巻 3 号 p. 376-389

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抄録

Phenytoin(DPH)を長期服用している重症心身障害児(36名)を対象に,体液中(血漿,耳下腺唾液,混合唾液)DPH濃度と歯肉増殖との関係を調査し次の結論を得た。
1)耳下腺唾液,混合唾液DPH濃度は血漿総DPH濃度と高い相関を示し,かつ血漿蛋白非結合型濃度とほぼ等しい濃度値を示した。
2)血漿総DPH濃度に対する割合は血漿蛋白非結合型濃度15.3%,混合唾液濃度19.0%,耳下腺唾液濃度14.3%であった。
3)以上のことから唾液中DPH濃度の測定は直接血漿蛋白非結合型濃度を推定する非常に有効な手段であることを指摘した。
4)歯肉増殖を呈していた者は36例中32例あり,軽度14例,中等度11例,重度7例であった。
5)各検体の段階別平均DPH濃度を比較すると,軽度と重度においては血漿総濃度(p<0.001),混合唾液濃度(p<0.001),血漿蛋白非結合型濃度(p<0.001),1時間あたりの混合唾液DPH分泌量(p<0.05)に有意差が認められ,また,軽度と中等度,中等度と重度においても有意差が認められた。
6)歯肉増殖程度を1から18まで分類した場合では血漿総濃度(rxy=0.71,p<0.001),混合唾液濃度(rxy=0.69,p<0.001),血漿蛋白非結合型濃度(rxy=0.57,p<0.01),耳下腺唾液濃度(rxy=0.55,p<0.02)などで正の相関が認められた。
7)DPH濃度と歯肉増殖には密接な関係が認められたが,これは対象者が歯科的な管理を全く受けていなかったことに起因していると思われた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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